全農チキンフーズ物語 3章
新生全農チキンフーズグループ時代:2008年(平成20年)~
三大産地に拠点を持つ、全農チキンフーズのグループ化
当時、グループ化を全農、宮崎経済連、鹿児島県経済連と共に強力に進めていました。グループ化は、全農チキンフーズに産地の宮崎経済連と鹿児島県経済連が出資すると同時に、宮崎経済連、鹿児島県経済連の100%子会社だった生産会社「宮崎くみあいチキンフーズ株式会社」「鹿児島くみあいチキンフーズ株式会社」を、全農チキンフーズの100%の子会社にするカタチにしました。
具体的には、宮崎経済連が宮崎くみあいチキンフーズの全株式、鹿児島県経済連が鹿児島くみあいチキンフーズの全株式を全農チキンフーズに譲渡。全農チキンフーズは株式交換比率にもとづく新株発行により、宮崎経済連と鹿児島県経済連に株式を交付するという「株式交換」により実施しました。(株式交換日は宮崎くみあいチキンフーズが2008年4月1日、鹿児島くみあいチキンフーズは同年5月1日)なお、岩手県の「住田フーズ株式会社」は2002年(平成14年)にすでにグループ化していたので、これで全農チキンフーズは、宮崎県、鹿児島県、岩手県というブロイラーの三大産地に生産会社を持つことになったのです。
このグループ化により、全農チキンフーズが実質的に生産・製造・販売を一貫して行う経営統合がなされました。また、宮崎くみあいチキンフーズ、鹿児島くみあいチキンフーズも地域に根付き、生産者の皆さまに密着した独立した会社として残ることとなったのです。
生産から販売まで一貫体制の確立とその影響
“生販一貫”の体制を実現する事で、より緊密に、より迅速に、消費者ニーズに応えられる体制ができました。もちろん、それまでの生産部門と販売部門も同じ農協系だったので、経営は違っても“親戚”のような関係でした。それがグループ化することで距離が縮まり“親子”くらいの近さになった気がします。
もともと、生産・製造部門と販売部門は、利益相反の関係にあります。しかし、全農チキンフーズは事前に計画した生産・製造コストで鶏肉を買い上げ、産地は生産・製造に特化する仕組みにしたので、生産から販売までの最適化を追求できる体制になったと思います。
一方で、全農チキンフーズにはリスクも増えました。これまでは、鶏のエサである配合飼料の購入は産地側でした。グループ化以降は、産地に配合飼料を年間固定価格で供給することになったので、全農チキンフーズ側が価格変動リスクを負うことになります。また、鶏肉相場の変動リスクも全農チキンフーズ側でした。したがって、配合飼料や鶏肉相場の動向により、全農チキンフーズの経営は大きく左右されることになります。実際にグループ化4年後の2012年(平成24年)には需給失調をきたし、鶏肉相場は史上最低値(モモ+ムネ760円)となるなど、厳しい経営を余儀なくされる事態も経験しました。このときは、グループ一丸となり合理化改善と販売強化に取り組み、競争力強化を進め、現在の経営基盤の礎ができたと考えています。
こうして農協系インテグレーションは、まだ発展すべきことはあるものの、「生産・製造」「販売」が経営統合したカタチになりました。
消費者接近型ビジネスへの課題
販売に関しては、当社は農協系販売会社として、生産者の皆さまが作った鶏肉を「大卸」として売り切ることが重要です。その上で、量販店や生協への直販にも力を入れて行きました。でも、私たちが最も弱いのは、消費者に接近した「中食」「外食」への取り組みです。
弁当や惣菜などの、美味しくいただけるコンシューマー商品のニーズはとても高まっています。また、外食の機会が増え、特に鶏肉を用いた外食は伸びています。ただ、過去の経験から、直接消費者に訴えるような商品作りや販売など、いわゆる「消費者接近型」のビジネスは同業他社に比べて私たちは弱く、上手く行かなかったという反省もあり、グループ化当時はほとんど着手できていませんでした。それで進めたのが、「株式会社アサヒブロイラー」のグループ化でした。


消費者向け市場強化のためのアサヒブロイラーとのグループ化
アサヒブロイラーは1957年(昭和32年)創業の老舗企業で、産地を持たず、処理工場を持たず、原料自体は外部から購入しています。私たちとの事業上の接点はあまりありませんでした。現在の主力事業は、大手百貨店のデパ地下や駅ビルなどで展開する40店以上の中食業態の直営店運営と、外食業態向けの食材販売で、そのための直営加工工場も所有しています。私たち全農チキンフーズには苦手な事業領域を持っている会社だと考えました。
アサヒブロイラーをグループ化することで、原料供給を全農チキンフーズで担い、新たな販路を作るのがねらいでした。例えば、住田フーズの「みちのく清流どり」は人気のある銘柄鶏ですが、レバーまで販売できるかというと難しかったりします。しかし、アサヒブロイラーの調理技術があると、「レバーのワイン煮」のような高級嗜好品として販売する事もできます。
さらに、中食ビジネスのノウハウをフィードバックして行けば、生産・製造と販売が一丸となった新たな商品開発にもつながるのではないかと思っています。中食ブームが続くいま、どんな商品がお客様に喜んでいただけるかを探るのは私たちの使命です。
アサヒブロイラーのグループ化によって、全農チキンフーズグループも消費者接近型事業を含めたビジネスモデルができたのではないかと考えます。
